星野マナミの旅行ログ&BLゲームレビュー

旅した記録とたまにBLゲームのレビューをします。

魔法使いと天使と悪魔 ~Two Choices of destiny~レビュー

大変硬派なBLゲームです。


舞台はファンタジーの世界、メインの登場人物は魔法使いの主人公、そしてその魔法使いのお相手となる天使と悪魔の3人。

つまりタイトルそのまんまです!

勿論このタイトルでリーマンBLだったら驚くのでそんな訳ないのですが、魔法使い、天使、悪魔というワードで思い浮かべるイメージのそのままのキャラクターが出て来てくれるので、絶対に期待を裏切られないであろうという絶大な安心感の元、プレイ出来ます。


そしてこの出て来る3人の登場人物もすこぶる大真面目!

魔法使いの主人公、ルシルは魔法使いのサラブレッドで膨大な魔力の持ち主ですが、まだ覚醒しておらず色恋も知らないピュアっ子です。

天使はお医者さんで、人間と同じように生活しながら、人間の役に立てるように日々お仕事をしている大変真面目で真摯、そしてちょっぴり天然ボケな眼鏡の好青年。

対する悪魔は悪魔なので無職。孤独に一人城の中に住まわってますが、ルシルの大きな魔力を自分の手中に収めたいが為に、ルシルに近づいて来るとても美しい魔性の見た目を持つ男性です。


この簡単なキャラ説明だけでも、絶対にプレイヤーのイメージを損ねないであろうことが分かりますよね。ゲーム本編中でも、魔法使い、天使、悪魔の各々のパーソナリティとして、汎用的な魔法、魔力の設定などが無理なく把握出来るようになっていて、自然に世界観を理解することが出来ます。


冒頭、ルシルはその身に起こった悲劇を起因として、天使か悪魔、どちらかの手を取りその後の己の運命を選択するのですが、本当にゲームの冒頭も冒頭で天使ルート、悪魔ルートと分岐する為、絶対にブレません。天使の手を取れば天使と幸せになれるか否か、悪魔の手を取れば悪魔と幸せになれるか否か、という分岐の細分化になるので、厳密な意味での三角関係にも発展しません。但し、お互いがお互いのルートにちょっかいはかけて来ます。


天使ルートのルシルは、天使のその人間に対する献身的な行いに当初は反発するも、彼の大きな博愛に触れて、自分の中にある「自分も人を愛したい」という気持ちを思い出すことが出来るようになる、という大変心温まるルートです。

人間界に少しづつ溶け込んで、少し凸凹ながらも息の合ったバディとして活躍するお話が楽しめます。

「天使が人間(魔法使い)を愛するということはどういうことか」という部分にも、丁寧に触れられています。


対する悪魔ルートのルシルは、文字通り人身御供で悪魔に対する献身を求められます。そこには二人以外の他者は存在せず、ルシルは常に悪魔を通して己との対話を続けることになるルートです。ルシルの根っからの負けん気の強さ、精神力の強さが発揮されるのはこちらです。天使ルートと対照的に頻出する様々なすけべイベントの過程で、「悪魔を愛してしまった」と気付き、そこから能動的に「悪魔を救済しよう」と自ら献身に目覚めるルシルの振る舞いはとても高潔で力強く、しかし悪魔になかなか伝わらずにその想いはまるで薄氷の上を歩くように儚くて、泣けます。

特に悪魔を失ってしまうかもしれない、と、真夜中ルシルが恐怖する瞬間のシーンの演出の美しさと来たら物凄い秀逸なので、あのシーン見る為にゲーム買って貰って損は無いと思いますね!


ていうか本当悪魔ズルイんだ悪魔実はもう本当に最初っからルシルに命預けちゃおって決めちゃってるので、根は優しくて構われたがりでさみしんぼうで常におしゃべり聞いて欲しくて、でも悪魔なのでその肩書きやら能力やらが邪魔して大体裏目に出ては慣れない子猫のルシルに引っ掻かれる、みたいなシーンの繰り返しなので、これは……愛してしまう……人類はみな悪魔を愛してしまう


あと個人的な推しポイントとして、ルシルの寝技の時のボイスが才能に溢れてるのでそこもオススメです。可愛くてえっちな魔法使いさん最高


そして各BADエンドにもかなりの拘りが見て取れる内容になっており、ミドルプライスであるにも関わらず大きな満足感を以て楽しませてくれます。

公式から販売されてるSS集と原画集も併せて読むと楽しさ倍増ですが、FDやドラマCDも出して欲しいですね。


BLゲーム入門書にも最適、BLゲーム玄人にも自信を持ってお勧め出来る名作です。

このシナリオ量、ED数でこの価格、実質タダでは!?!?

是非プレイしてみてください。